消食の食材
消化機能を促進させ、胃腸で滞っている食べ物を消化させる食材。
消化の滞りによっておこる腹痛、嘔吐、下痢、便秘、膨満感などにもちいます。
味酸・甘、性平、胃・肝経
酢は世界中で使われている調味料です。
日本では米酢がつくられるように、フランスならワインビネガー、イタリアならバルサミコ酢、イギリスならモルトビネガーというように、その土地でとれる農産物で作られます。
八世紀、イタリアの中世都市サレルノにヨーロッパ最古の医学校が創設され、のちにそこで、《サレルノ養生訓》という読本が編まれました。
健康で過ごすためには、衣食住でどのようなことを心がけたらよいか、医食同源のヨーロッパ版とでもいうべきことが書かれおり興味深い本ですが、ここでは酢(おそらくワインが原料のもの)についてこのようにかかれています。
酸っぱい食酢は涼感をさそいますが、喉がかわきます。
でも、身体の体液の悪い部分を導いて、是正させます。
食酢は人を憂うつにし、目をひりひりさせるけれど、太ったり、体質が改善することはありません。
食酢によって精子は減少しますが、食欲は亢進します。
その味と香りは、どちらも伝染病に対して効果的です。
所変わって中国では、もち米からつくられる香醋(こうず)がよく使われています。
血液の淀みをとり、血流をよくし、消化を助け、解毒、止血などの効果があるとされます。
日本では《本朝食鑑》に書かれている酢の使い方として、面白いものに「気絶して回復しない場合、酢に焼け石をいれてその臭いを鼻から吸い込ませると蘇生する」とあります。
またそのなかで、酢の性質として「無毒。多く飲めば脾胃を損なう」とあります。
貝原益軒の《養生訓》を見ても、酢を多く摂りすぎると胃を痛めるとあり、ヨーロッパ人や中国人よりも平均的に胃弱な日本人の体質を感じさせます。
濃厚な中華料理を食べるときは、酢を使ってあっさりさせ、消化をうながす必要もあるでしょう。
あっさりとした和食中心の生活をしている日本人であれば、無理に多くとる必要はありませんが、酢、特に玄米から作る黒酢は、精製した穀物から作る酢とくらべアミノ酸がなどの栄養が豊富で、食欲をそそり、疲労回復に役立ちます。
五味偏勝をさけるといって、甘、辛、塩辛、苦、酸、この五つの味をバランスよく食べることが大事だとされます。
食材の効能【五味】も、ご参照ください。
参考文献【佐々木巌著 サレルノ養生訓 柴田書店】
食材の効能
- 解毒
- 血流改善
- 止血
- 消化促進
- 消食
- 食欲不振